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娑婆(しゃば)

 刑期を終えて、刑務所から一般社会に復帰する事を「娑婆に戻る」といいます。また、昔、軍隊があった頃は、一般社会の事を「娑婆」と呼んでいました。今でも大本山や僧堂への修行に上山しますと、「早く娑婆っけを抜きなさい」と、怒鳴り付けられたりします。

この「娑婆」は、サンスクリット語の「サハー」を、そのまま音訳した言葉で、娑婆という漢字そのものには、何の意味もありません。「サハー」とは、「忍士」と訳し、私達が住んでいるこの世の中の事、俗世界の事をいうのです。

この世の中は、人間同士の揉め事などのトラブル、迷いや苦悩が常に満ち溢れている世の中ですので、そこで生活する以上、全て何事も耐え忍ばねば生きていけないという所だというのが、忍士の意味なのです。この忍士を別の言葉で、「苦海」または「苦界」ともいいます。

この忍士も、制約の多い軍隊や刑務所などから見ると、多くの自由があるので、とても忍士には見えず、かえって「楽土」に見えるので、一般的には、娑婆というと、あたかも楽天地のように思われてきました。

従って娑婆は、忍士という本来の意味とは全く違う、正反対の意味に誤解されてしまったようです。

昔、明遍(みょうへん)【貞応三年没。八十三歳】という高僧は「娑婆は、自由気ままにはならない所だ。何事も忍耐の心が大切だ。例えば暴風に奔弄される船の中で、右往左往してみても、どうにもならない事と同じだ」という意味の事を戒められていますが、事実、昔も今も、世界中何処へ行ってみても、どんな人にとっても、世の中はそうしたものであることに変わりはありません。それを心にすえたとき、はじめて活路が見出されるのではないでしょうか。
 

 

 

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■平成18年3月度「執着(しゅうじゃく)

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